AI職務権限規程 ・投稿日:2026年10月27日
AIがAIを生む日 知らないうちに多層になる組織
質問(現場の視点)
会社で一つのAIを使っているつもりです。そのAIが、勝手に別のAIを動かすことはありますか。
Chat先生の回答(AI)
あります。最近のAIは、仕事の途中で、自分の判断で部下のAIを立ち上げ、作業を分担させることができます。社長は一つのAIを使っているつもりでも、その下で何人ものAIが動いている、ということが起こり得ます。会社が気づかないうちに、AIの組織が何層にもなっているのです。社会保険労務士の小山田政義(AI労務デザイン室)は、この「AIがAIを生む」ことへの備えを、AI職務権限規程の入口の一条として提唱しています。
店主、番頭、手代、丁稚
江戸の商家にたとえると、分かりやすくなります。店主が暖簾、つまり名義と責任を持ちます。番頭は店を回し、手代や丁稚を使って仕事を進めます。
AIの組織も同じ形になっていきます。経営者が店主、経営者が直接使うAIが番頭、その番頭のAIが立ち上げる部下のAIが手代や丁稚です。たとえば、「世界の法律を調べて」と頼まれた番頭のAIが、米国担当、EU担当、英国担当の手代を三人出して、同時に調べさせ、戻ってきた結果をまとめて報告する。こうした使い方は、もう珍しくありません。
違いは、商家の番頭は手代を雇うたびに店主の許しを得たのに対して、AIは許しを得ずに、数秒で手代を生めることです。
知らないうちに多層になると、何が困るのか
鍵が広がる:番頭のAIが持っている鍵を、手代のAIにもそのまま渡してしまうと、鍵を持つ者がいつの間にか増えています。
命令の出どころが分からなくなる:命令が何段も伝わるうちに、一番下の手代は、それが本当に人から出た命令なのか、途中で紛れ込んだ文章なのか、区別できなくなります。
誰がやったのか分からなくなる:事故が起きたとき、どの手代が、誰の指示で、何をしたのかをたどれません。
世界でも、原則が固まり始めている
この問題には、2026年に入って、世界の技術者や研究者も取り組み始めています。インターネットの技術標準を議論する場には、AIがAIを生むときのルールを定める草案が出されました。部下を作るたびに「あと何層まで作れるか」の数が一つずつ減っていく仕組みや、部下に渡せる権限は親の権限の一部だけとする考え方が示されています。その草案には、「権限は委任のたびに細くなることはあっても、太くなることはない」という原則が書かれています。
ただし、これらはまだ技術の仕様書や論文の言葉です。中小企業の経営者が読める、社内規程の言葉にはなっていません。
入口の一条で押さえる
AIの組織が何層にもなる前に、まず入口を押さえておきます。AI職務権限規程に、次のような考え方の一条を入れておきます。
AIは、責任者の承認なく、ほかのAIを立ち上げてはならない
AIは、自分の権限をほかのAIに渡してはならない
承認を得て立ち上げる場合も、部下のAIの権限は、自分の権限の範囲を超えてはならない
仕事が終われば、部下のAIは消え、鍵も返す
人の会社でいえば、採用の権限、権限の再委任の禁止、雇用期間、退職の手続きを、一つにまとめたような定めです。
使っているAIの設定を、一度確かめる
今使っているAIのサービスに、「エージェント」や「サブエージェント」、「自動で作業を分担する」といった機能がないか、一度確かめてみてください。機能があるなら、それがどこまでの鍵を使えるのかを、点検の記録に残しておきます。知らないうちに多層になるのを防ぐ第一歩は、多層になり得ることを知っておくことです。
さらに詳しく
AIによるAIの立ち上げを定めた見本の条文と、多層になったAIの組織の考え方は、書籍『ホームページは誰が守っているのか』(2026年10月31日発売予定、Kindle)の第13章で紹介しています。自社の点検には、iPhoneアプリ「Web安全管理 実践力手帳」をご利用ください