AI職務権限規程 ・投稿日:2026年10月27日
AI行動規範 経営者がAIについて約束すること
質問(現場の視点)
会社でAIを使い始めました。経営者として、取引先やお客様に何か示しておくべきことはありますか。
Chat先生の回答(AI)
示しておくべきなのは「AI行動規範」です。AI行動規範とは、経営者が自分の名前で出し、「当社ではAIをこういう考えで働かせる。止める判断と最後の責任は人が持つ」と外に約束する宣言です。社会保険労務士の小山田政義(AI労務デザイン室)が提唱する「三点セット2.0」のうち、経営者の角にあたる文書です。
「行動規範」は、世界ではAIの振る舞いを決める言葉になっている
「行動規範」という言葉は、AIの分野ですでに重く使われています。2023年のG7広島AIプロセスでは、高度なAIを開発する組織のための「国際行動規範」がまとめられました。EUでも、AI法の下で汎用AIの行動規範が作られています。
2026年9月には、米国の大手IT企業のAI部門が、自社のAIモデルの振る舞いを定める行動規範の草案を公開しました。この草案が縛るのは、利用者ではなくAIそのものです。人間による制御を最優先にし、AIが止められることに抵抗しない、と書いています。さらに、AIを自社のサービスに組み込む企業が、その規範の範囲内で振る舞いを調整でき、その責任は企業が負う、という形になっています。
つまり、AIを作る会社の規範の上に、AIを使う会社が「当社ではこう働かせる」を重ねる余地があります。そこが、中小企業の経営者が出す「わが社のAI行動規範」の居場所です。
AI倫理指針とは、何が違うのか
多くの会社が作っている「AI倫理指針」や「生成AI利用ガイドライン」は、社員がAIを使うときの心構えを定めたもので、主語は社員です。AI行動規範は、それとは向きが違います。会社が、AIという働き手をどう扱うかを、経営者が外に約束するものです。
AI行動規範に書くこと
長い文書である必要はありません。次のような項目を、一枚にまとめます。
何のためにAIを使うのか:業務の効率化、お客様への対応など、AIを使う目的を示します。
どこでAIを使っているのか:とくに、お客様と直接やりとりする場面(問い合わせの自動応答など)でAIを使っている場合は、そのことを明らかにします。
最後の判断は人が持つ:AIの判断をそのまま最終の判断にはしないこと、AIを止める判断は人が行うことを約束します。
AIに渡さない情報:お客様の個人情報を、どのような条件でAIに扱わせるのか、あるいは扱わせないのかを示します。
困ったときの窓口:AIの対応に疑問や不満があるとき、人に相談できる連絡先を示します。
見直し:年に一度、内容を見直すことを約束します。
一文の例
たとえば、次のような一文から始めることができます。
当社は、業務の一部をAIに任せています。ただし、AIを止める判断と、AIが行ったことの最終的な責任は、すべて当社の代表者が負います。
この一文があるだけで、取引先は、「この会社では、AIに任せきりにはしていない」と分かります。
三点セットの「方針」の角を引き継ぐ
AI行動規範は、ホームページの安全管理のために経営者が出し、外に公表する「Web安全管理方針」の、AI版にあたります。方針は、それだけでは会社を守れません。外の相手との約束である「AI運用契約」と、社内のルールである「AI職務権限規程」がそろって、初めて三角形になります。経営者の宣言は、その三角形の頂点です。
AIも、あなたの規範を読む
これからは、取引先の担当者よりも先に、取引先のAIがあなたの会社のホームページを読むようになります。AI行動規範をホームページに載せておけば、相手のAIも「この会社はAIをこう扱う」と読み取ります。人に向けた約束が、そのままAIに向けた約束にもなるのです。
さらに詳しく
経営者が外に約束する「Web安全管理方針」の全文と、AI行動規範を含む「三点セット2.0」の考え方は、書籍『ホームページは誰が守っているのか』(2026年10月31日発売予定、Kindle)に収録しています。自社の点検には、iPhoneアプリ「Web安全管理 実践力手帳」をご利用ください。