AI職務権限規程 ・投稿日:2026年10月27日
承認者が新幹線の中にいたら、AIはどうするか
質問(現場の視点)
夜中にAIが「脆弱性が見つかりました。サイトを止めてよいですか」と承認を求めてきました。ところが、社長にも誰にも電話がつながりません。AIはどうすればよいのでしょうか。
Chat先生の回答(AI)
これは「代決」の問題です。承認者に連絡がつかないとき、AIは何をしてよく、何をしてはいけないのか。その答えは、事故が起きてからでは出せません。会社ごとに平時に決めておくしかありません。社会保険労務士の小山田政義(AI労務デザイン室)は、この代決の定めを「AI職務権限規程」の中で最も重い一条だと位置づけています。
2026年10月21日の夜、承認者は新幹線の中にいた
2026年10月21日、PHPの重大な脆弱性の発表が夜11時ごろに迫っていました。そのとき小山田は、東京からの帰りの新幹線の中にいました。システムに詳しい家族からの知らせを受け、車内からLINEと電話で状況を確かめ、事務所に戻ってから打ち合わせをして、午後9時30分にサイトを止めると決めました。
この夜は、人と人の間で知らせが届き、決めることができました。では、知らせてきたのがAIで、承認者が電話に出られなかったら、どうなっていたでしょうか。
止めるのは、本当に安全側か
「危ないなら止めればよい」と考えがちです。しかし、止めればお客様の仕事も止まります。勤怠の打刻ができない、予約が入らない、注文が受けられない。夜中に止めて、朝まで誰も気づかなければ、その影響は小さくありません。
一方で、止めずに待てば、その間に攻撃を受けるおそれがあります。個人情報が漏れれば、報告や通知の義務も生じます。
どちらが正しいかは、会社と、そのシステムが扱うものによって違います。だからこそ、平時に決めておく必要があるのです。
平時に決めておく五つのこと
代決者の順番:承認者に連絡がつかないとき、次に誰に連絡するのか。代表者、次に代決者、その次に誰か、と順番を決めます。
連絡の手段と待つ時間:電話とメッセージなど、二つ以上の経路で連絡します。何分応答がなければ「連絡がつかない」とみなすのかも決めます。
連絡がつかないときのAIの動き:原則として、AIは設定を変えずに、記録と通知を続けます。そのうえで、例外として「サイトの一時停止までは一人でしてよい」とするか、「通知だけにとどめる」とするかを、会社ごとに選びます。
例外が使える条件:一時停止を認める場合は、「公式に緊急の脆弱性が発表され、修正がまだ当たっていないとき」のように、条件を具体的に決めます。「危なそうなとき」のような書き方では、AIには判断できません。
再開は必ず人が決める:止めることはAIに任せても、再開の判断は人に残します。修正が済んでも、世の中の状況を確かめてから戻す。10月21日の翌日、小山田もそうしました。
システムごとに答えを変えてもよい
答えは、一つの会社の中でも、システムごとに変えてかまいません。応募者や顧客の個人情報を受け付けるフォームは、止める側に倒す。予約や受注のシステムは、通知だけにとどめて人の判断を待つ。こうした線引きを、操作ごとの表にまとめておきます。
人の職務権限規程にも、代決はある
人の会社の職務権限規程にも、「決裁者が不在のときは代決者が決める」という定めがあります。AIの時代に新しいのは、承認を求めてくるのが人ではなくAIで、しかも夜中でも休日でも、待つことなく求めてくるという点です。人の代決は「誰が決めるか」を決めれば済みました。AIの代決は、「誰も決められないとき、AIは何をするか」まで決めておく必要があります。
さらに詳しく
代決を定めた見本の条文と、操作ごとにAIの権限を書き分けた別表の例は、書籍『ホームページは誰が守っているのか』(2026年10月31日発売予定、Kindle)の第13章で紹介しています。自社の点検には、iPhoneアプリ「Web安全管理 実践力手帳」をご利用ください。